JIS規格(日本工業規格)とは、日本国内で製品やサービスの品質や安全性を保証するために定められた標準規格です。企業が競争力を維持し、品質を向上させるためには、この規格への適合が重要となります。
しかし、JIS規格とISOなど他の規格との違いや、取得のために必要な手続きについては、初めての方にとっては疑問が多いものです。
本記事では、JIS規格の基本的な情報から、規格取得のための手順、そして実際にかかる費用まで、わかりやすく解説します。さらに、JIS認証を取得することで得られるメリットや、認証をサポートする企業の選び方についてもご紹介します。
これから自社製品をJIS規格に適合させたいと考えている方にとって、役立つ情報が満載ですのでぜひご覧ください。
JIS規格とは?

JIS規格(Japanese Industrial Standards、日本産業規格)は、日本国内における産業製品の品質・性能・安全性を標準化するために定められた国家規格です。
JIS規格には、製品の形状・寸法・材質・性能基準だけでなく、試験方法や測定基準、表示方法なども含まれます。これにより、製品の品質や安全性を確保し、企業間の取引や消費者の選択をスムーズにする役割を果たします。
特に輸送包装試験では、JIS規格は日本国内での輸送や取り扱いを想定し、包装の耐久性や安全性を評価する基準として活用されます。
JIS規格の目的
JIS規格が制定される目的の一つは、製品の統一化と単純化を図ることです。例えば、トイレットペーパーを想像してください。もし各メーカーが異なるサイズや直径のトイレットペーパーを作っていたら、消費者はホルダーに合うものを探すのが大変になります。
しかし、JIS規格によってトイレットペーパーのサイズが統一されているため、どのメーカーの商品でも標準的なホルダーに収まるようになっています。このようにJIS規格があることで、消費者は安心して製品を選ぶことができ、企業は無駄のない製造が可能になります。この仕組みがJIS規格の目的です。
また、品質管理の基準が統一されることで、安全性や性能の確保がしやすくなり、ひいては日本の産業全体の競争力向上にもつながります。
JIS規格とISOの違い
JIS規格とISO(International Organization for Standardization、国際標準化機構)規格は、どちらも工業製品の品質や性能を標準化する目的で制定されていますが、適用範囲が異なります。
違い | |
---|---|
JIS規格:日本国内で適用される国家規格 | ・日本工業標準調査会(JISC)が審議し、経済産業省が認定 ・国内の産業や市場のニーズに応じた基準が設定される |
ISO規格:世界各国で共通して適用される国際規格 | ・スイス・ジュネーブに本部を置くISOが策定 ・世界中の企業や政府機関が採用し、国際取引の基準にもなる |
例えば、品質マネジメントシステムの国際規格であるISO 9001を取得している企業は、国際市場での信用力が高まるメリットがあります。一方、国内市場での取引を円滑に進めるためにはJIS規格の適合が求められる場合があるため、用途に応じて適切な規格を選択することが重要です。
このように、JIS規格は国内向けの品質基準、ISO規格は国際的な品質基準という違いがあります。企業によっては、両方の規格を取得し、国内外の市場での信頼性を高める戦略を取ることもあります。
JIS・ISO規格以外の規格とは?

ここでは、JIS・ISO規格以外の規格である以下2つについて解説します。
それぞれの特徴を把握して、どの規格の輸送検査を受けるべきかの参考にしてみてください。
ASTM
ASTM規格は、輸送・包装に関する試験の信頼性を確保するための国際的な基準です。輸送中に製品が受ける衝撃や振動、温度変化などの影響を再現し、包装材や製品の耐久性を検証します。
特にASTM D4169は、実際の流通環境を想定した包括的な試験プロトコルとして広く利用されています。製品が配送過程で破損するリスクを事前に把握し、適切な対策を講じることが可能です。
また、ASTM D5276では落下試験が規定されており、落下によるダメージの程度を評価できます。試験を通じて、製品品質の維持と顧客満足度の向上が図れます。
ASTM規格を採用することで、国内外の物流における品質管理がより確実なものとなり、ブランド信頼の強化にもつながるでしょう。
ISTA
ISTA規格は、国際的に認知された輸送試験の基準であり、多様な製品や包装形態に対応しています。振動、落下、湿度、温度変化など、現実の輸送中に起こり得るストレスを再現する試験をおこないます。
製品やパッケージの耐久性を事前に確認することが可能です。また、ISTAの試験に合格した包装には認証ラベルを付けられ、取引先や顧客に対して信頼性を示せます。
製品保護だけでなく、コスト削減やクレームの防止にもつながるため、多くの企業が採用しているのが特徴です。
JIS認証の流れと費用

JIS規格に適合していることを証明するには、正式なプロセスを経る必要があります。これは、製品がJIS規格に準拠していることを第三者機関が評価・確認し、証明する仕組みです。
ここでは、JIS認証を取得するまでの一般的な流れと、気になる費用の目安についてわかりやすくご紹介します。
それぞれ詳しく解説していきます。
JIS認証の5ステップ
認証のステップは、一般的に以下の5つのステップを踏んで進んでいきます。
- 認証の申請
- 工場審査、製品試験
- 認証決定
- JISマーク使用許諾契約の締結、表示の確認
- JIS適合性認証書の発行、認証製品の公表
JIS認証の取得には、申請から認証決定、JISマークの使用許諾、認証書の発行までの一連の流れを確実に進める必要があります。
スムーズにJIS認証を取得するためには、あらかじめ認証プロセスを理解し、必要な資料や試験の準備を整えておくことが大切です。認証取得後は、JISマークを適切に表示し、認証製品として市場での信頼性を高めることができます。
JIS認証の費用
JIS認証の取得には一定の費用がかかりますが、その金額は一律ではなく、次のような要因によって変動します。
- 認証を依頼する登録認証機関
- 適用されるJIS規格の種類や難易度
- 審査対象となる工場の所在地や規模
- 必要な試験やサンプル数の多寡
そのため、具体的な費用を知りたい場合は、必ず登録認証機関に問い合わせを行い、見積もりを取得することが必要です。
JIS規格のメリット

JIS規格は日本工業規格として信頼性が高く、多くの企業が共通の基準として利用しているため、試験結果の比較や取引先との合意形成がしやすいです。また、JIS規格は実際の輸送環境を想定した試験方法が定められているため、現実的かつ実用的な評価ができます。
製品の破損リスクを事前に把握でき、クレームや返品の削減にもつながるでしょう。JISに準拠していることで品質管理体制のアピールにもなり、顧客や取引先からの信頼向上にも貢献します。
企業の競争力を高めるうえでも、JIS規格の活用は非常に有効です。
JIS規格のデメリット

国際規格であるISOやASTMと比較すると、日本国内に特化しているため、海外取引の際には追加の試験が必要になるケースがあります。コストや時間の面で非効率になるケースがあるでしょう。
また、規格の一部が古く、最新の物流環境や素材に対応しきれていないのも指摘されています。特にネット通販の普及に伴い、多様化する輸送形態への対応が求められていますが、改訂のスピードが追いついていないケースも多いです。
JIS規格は記載内容が専門的で、初めて取り組む企業や担当者には理解しづらいこともあります。十分な理解や教育が必要となり、導入のハードルが上がる可能性も高いです。
輸送・包装試験会社を選ぶ際のポイント

輸送・包装試験会社を選ぶ際は、以下5つのポイントを押さえましょう。
それぞれのポイントを把握して、最適な輸送・包装試験会社選びに役立ててみてください。
自社がしたい試験が揃っているか
自社が実施したい試験項目が揃っているかを確認することは非常に重要です。試験内容が希望と一致していなければ、再度別の会社に依頼する必要が生じ、コストや時間の無駄につながります。
たとえば、落下試験や振動試験、温湿度試験など、自社製品の特性や流通経路に応じて必要な試験は異なります。あらかじめ試験会社の対応可能な項目を確認し、自社の要件と照らし合わせて選ぶことが大切です。
また、業界規格や国際基準への対応可否も併せてチェックすると、製品の信頼性や品質を高めるうえで安心です。試験の網羅性は、スムーズな認証取得やトラブル防止にもつながります。
第三者機関に認定されているか
信頼性の高い認定を受けている企業は、試験の正確性や品質管理の水準が一定以上であることを示しています。たとえば、ISO認証やISTA(国際安全輸送協会)などの認定を取得している場合、試験結果は国内外の取引先にも安心して提示できます。
製品の輸送時に発生するリスクを正確に把握し、適切な対策を講じるうえで大きな強みです。また、第三者機関の認定は、企業のコンプライアンス意識や透明性の高さも裏付けるものです。
試験内容が客観的かつ公正に実施されている証拠となるため、依頼先としての信頼性を判断するうえで欠かせない要素といえるでしょう。
カスタマイズ試験ができるか
カスタマイズ試験が可能かどうかが重要なポイントです。製品の形状や材質、出荷方法は企業ごとに異なるため、既存の試験内容だけでは実際の輸送環境を正確に再現できないケースがあります。
自社の実情に合わせた試験設計ができるかどうかを確認することが必要です。たとえば、特定の輸送経路や温湿度条件を想定した試験など、柔軟な対応が可能な会社であれば、より精度の高いリスク評価ができます。
また、開発段階から相談に乗ってくれる体制が整っている会社であれば、トラブルを未然に防ぎ、コストや納期の面でも安心です。
試験内容の選定から包装設計までワンストップでできるか
試験内容の選定から包装設計まで一貫して対応できるかも重要なポイントです。単に試験を実施するだけでなく、製品の特性や流通環境を考慮した最適な包装設計を提案できる会社であれば、トータルでの品質確保につながります。
一貫体制を持つ企業であれば、試験データをもとにそのまま改善提案までおこなうことが可能です。仕様のすり合わせや外注管理の手間を大幅に削減できます。
また、試験と設計の連携が取れていることで、実運用に即した現実的な提案が期待できます。コストや納期面でも柔軟に対応できるため、ビジネスのスピード感にもマッチしやすいでしょう。
価格が適正か
価格が極端に低い場合は、試験内容が不十分な可能性もあります。まずは、複数の会社から見積もりを取り、相場を把握することが重要です。
試験の内容や対象物、必要な報告書の詳細などにより費用は変動します。価格だけでなく提供されるサービスの質にも目を向けましょう。
同じ金額でも、対応の丁寧さや納期の柔軟さ、試験実績の有無などで満足度は大きく異なります。また、価格が高めに設定されている会社でも、きめ細かなサポートや信頼性の高い試験結果を提供している場合があります。
費用対効果を総合的に判断することが、最適な選択に大切です。
おすすめの輸送・包装試験会社3選

JIS規格に準拠した試験を実施するには、専門的な試験設備とノウハウを持つ試験機関の協力が不可欠です。ここでは、信頼性の高い輸送・包装試験を提供するおすすめの試験会社を3社ご紹介します。
それぞれ詳しく解説していきます。
日本ビジネスロジスティクス株式会社
項目 | 詳細 |
---|---|
会社名 | 日本ビジネスロジスティクス株式会社 |
所在地 | 神奈川県横浜市神奈川区守屋町三丁目9番地 3号ビル2階 |
設立年 | 1993年6月23日 |
公式サイト | https://www.jbl.co.jp/ |
日本ビジネスロジスティクス株式会社は、ISTA(International Safe Transit Association)認定の試験設備を備え、国際基準に準拠した高度な輸送試験を提供しています。
- 国内最大級のISTA認定試験所として、年間100件以上の輸送試験を実施
- 最新の試験機器を用いた、精密かつ信頼性の高い評価
- 幅広い業界の企業から支持される実績
輸送試験のプロフェッショナルとして、企業のJIS認証取得を強力にサポートしています。
日本ビジネスロジスティクス株式会社が所有している試験機
日本ビジネスロジスティクス株式会社が所有する主な試験機は、振動試験機や落下試験機、圧縮試験機などです。それぞれ異なる環境条件を再現して試験を実施します。
製品の梱包状態や構造が輸送中にどのような影響を受けるかを詳細に分析できます。また、試験結果を基にした改善提案もおこなっており、製品の品質向上やコスト削減にも貢献しているのもポイントです。
以下の記事では、日本ビジネスロジスティクスが対応している試験内容や会社の特徴などを紹介していますので、詳しく知りたい方は参考にしてみてください。
日通NECロジスティクス株式会社
項目 | 詳細 |
---|---|
商号 | 日通NECロジスティクス株式会社 |
本社 | 神奈川県川崎市中原区小杉町1-403 武蔵小杉STMビル |
設立 | 1972年2月28日 |
公式サイト | https://www.nittsu-necl.co.jp/ |
日通NECロジスティクスは、日本通運とNECの合弁会社として設立された総合物流企業です。同社の輸送包装試験サービスでは、最新の試験設備を活用し、リアルな輸送環境を再現することで、製品の耐久性や安全性を評価します。
- 振動・衝撃・圧縮・温湿度変化など、多角的な試験を実施
- グローバル物流ネットワークを活かした試験・評価体制
- 総合的な物流アプローチで、製品の輸送リスクを最小化
JIS認証だけでなく、国際市場への展開を見据えた試験も可能な点が強みです。
日通NECロジスティクス株式会社が所有している試験機
日通NECロジスティクス株式会社が所有している代表的な試験機は、振動試験機や落下試験機、温湿度環境試験機などです。衝撃や揺れ、温度変化といった輸送中に起こりうるさまざまなリスクに対応しています。
また、同社では試験データの蓄積と分析を通じて、継続的な品質改善をおこなっており、顧客の製品保護に対するニーズにきめ細かく応えています。信頼性の高い輸送試験体制が、日通NECロジスティクスの大きな強みです。
以下の記事では、日通NECロジスティクスが対応している試験内容や会社の特徴などを紹介していますので、詳しく知りたい方は参考にしてみてください。
ロジスティード株式会社
項目 | 詳細 |
---|---|
商号 | ロジスティード株式会社 |
創業 | 1950年2月 |
本社所在地 | 東京都中央区京橋二丁目9番2号 ロジスティードビル |
公式サイト | https://www.logisteed.com/jp/ |
ロジスティードは、日立グループの物流ソリューション企業として、幅広い包装試験サービスを提供しています。
- 振動試験・落下試験・圧縮試験など、多様な環境下での包装評価を実施
- 日立グループの技術力を活かし、精度の高い試験分析を提供
- デジタル技術を活用した物流ソリューションの開発にも注力
輸送時のリスクを徹底的に分析し、最適な包装設計の提案を行うことで、安全かつ効率的な物流の実現を支援します。
ロジスティード株式会社が所有している試験機
ロジスティード株式会社が所有している代表的な設備としては、振動試験機があります。輸送中の車両の揺れを模擬し、商品にかかる負荷を検証できます。
また、落下試験機では、荷物の取り扱い時に発生する衝撃への耐性の測定が可能です。温湿度試験機を使えば、温度や湿度の変化が製品に与える影響も確認できます。
また、以下の記事では、ロジスティード株式会社が対応している試験内容や会社の特徴などを紹介していますので、詳しく知りたい方は参考にしてみてください。
まとめ
JIS規格は、日本国内における製品の品質・安全性・性能を標準化するための重要な国家規格です。特に、JIS認証を取得することで、市場での信頼性向上や競争力強化、取引の円滑化といったメリットが得られます。
JIS認証の取得には、申請から工場審査・製品試験、認証決定、JISマークの表示、認証書の発行といった一連のプロセスがあり、それぞれ慎重な準備が必要です。また、認証にかかる費用は製品規格や試験内容、認証機関によって異なるため、事前に見積もりを取得し、コストを把握することが大切です。
JIS規格の適用を検討する際は、取得の目的や製品特性、市場ニーズを踏まえ、適切な準備を進めることが成功のカギとなります。本記事の内容を参考に、自社にとって最適なJIS認証取得の計画を立ててみてください。